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蝶が舞う街

by 唐草 [2018/05/16]



 ぼくがよく使う最寄り駅の駐輪場は、駅から離れたへんぴな場所にある。再開発の影響でドンドン駅から離れていった末にたどり着いた僻地である。しかも、縦に長い構造なので奥の方に止めると駅まで徒歩5分ぐらいかかってしまう。間違いなく不便な駐輪場である。だが、その不便さ故に利用料が無料にもかかわらずいつでも自転車を駐められる。世の中の多くの人は、100円を払ってまで歩くことを避けているのだ。
 街の中心地から外れた場所にあるので、駐輪場の奥には森が広がっている。森の正体はある会社の研究所の庭園らしいのだが、庭園と呼ぶには野趣にあふれているようにも見える。少なくとも塀の外から裏側を覗く限り、手入れの行き届いていない雑木林にしか見えないのである。好意的に受け止めれば、武蔵野の原風景とも言えるかもしれない。何事も考え方次第である。
 今日は、森にカメラを向けている人がいた。季節的に何か花でも咲いているのだろうか?気になったのでレンズが向けられている方向に目を向けた。
 背の高い木の中程に白い紙のようなものがいくつも舞っていた。ひらひらと風に舞うように木の周りを行ったり来たりしている。色と大きさ、舞うような動きからするとモンシロチョウのように見える。モンシロチョウがあんなに高い場所で群れているなんて珍しい。木に色鮮やかな花が咲いている様子はない。枝葉にしか見えないような地味な花が咲いていて、蝶を惹きつけるフェロモン的なものを出しているのかもしれない。
 濃くなりだした葉の緑色と白い蝶のコントラストが鮮やかである。楽園的な落ち着きを感じさえる優雅な光景にも見える。これは確かにカメラに収めたくなる光景だ。時間に余裕があれば、ぼくだってカメラを構えていたことだろう。
 夕方、仕事を終えたぼくは駐輪場に戻ってきた。日の長い季節なので、まだ十分に明るい。これなら蝶はまだ群れているかも知れない。そう期待していた。
 だが、ぼくの期待は裏切られることとなった。
 駐輪場には、いくつかの紙くずのようなものが落ちていた。3cmぐらいの小さく白い紙にしか見えないものだ。でも、こんな場所に紙くずが散乱しているはずもない。今朝見たモンシロチョウが力尽きてしまったのだろうか?白い何かをじっくりと眺めてみた。
 蝶にしては胴が太いし、羽に斑点もない。これはモンシロチョウじゃない。蛾だ。名前は分からないが、夏場に時々見かける白い蛾だ。
 と言うことは、朝見た美しい光景は蛾の群だったのか。毒蛾じゃないよね?かぶれたりしないよね?よく分からないが、触らない方がいいだろう。
 楽園にも見えた光景だったが、実際は危険地帯だったのか。危ない危ない。