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今度は枝垂れ桜の畑が

by 唐草 [2017/12/13]



 先日、散歩コースにあるキウイフルーツの畑が宅地に代わってしまったという話を書いた。珍しいキウイフルーツの畑は、ぼくのお気に入りスポットだった。その畑に植わっている細い木がチェーンソーで枝を落とされ、残った切り株が小さなショベルカーで無造作に抜かれていく様子は、一方的な暴力を見ているような目を背けたくなる光景だった。
 あれからちょうど2週間ぐらい経過した今日、ぼくのお気に入りスポットがまたしても姿を消した。今日、姿を消したのは自宅から歩いて3分ぐらいのところにある樹木畑。その畑では、枝垂れ桜を育てていた。その畑では苗木を売るのではなくて、ある程度育った木を売っていたのだろう。公園やマンション周辺の緑地などに植えるための育った樹木を商っている感じだった。
 畑の規模はそう大きくはない。100m x 50mといったところ。だが、この畑は近所では有名なお花見スポットとして知られていた。公園ではなく他人様の畑なので敷地内に立ち入ることはできなかった。それでも春になると満開の枝垂れ桜を見ようと多くの人が、畑の周りをカメラ片手にフラフラ散歩していたものだ。ぼくもその1人である。
 この桜畑には、育成状態が良く剪定されてほぼ同じ高さの枝垂れ桜が約200本ぐらい植わっていた。200本もの若木の枝垂れ桜が一斉に満開を迎えた様は実に見事である。ソメイヨシノよりも色の濃い花が、奥を見通せないほどに咲きあふれている。目の前にピンク色の洪水が広がっているような圧巻の光景となっていたのだ。ここまで密な桜は他のどんな場所でも見たことが無い。
 だが、そんな見事な光景ももう2度と見ることはできない。
 チェーンソーが次々に桜の枝を切り落としていく。枝を落とされ幹だけになった丸裸の枝垂れ桜をアームを付けたパワーショベルが、大きな音を立てながら抜いていく。先日見たキウイフルーツ畑の整地よりもずっと荒々しく解体が進められていた。
 そう言えば、久しく桜が出荷されたのを見ていない。抜いた空白がないまま何年も密に花を結んでいた。近隣の住民たちの目を喜ばせはしていたが、畑としての仕事はずっと前から失っていたのかもしれない。もう2度と満開の枝垂れ桜を見られないことを嘆くよりも、今年の春まで他のどんな場所よりも濃い桜を見られたことに感謝しておこう。