カレンダー

2017/07
      
     

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

焼おにぎりに求めるもの

by 唐草 [2017/07/20]



 1限から授業があるとき、ぼくは大学で朝食をとるようにしている。食べるのは、決まっておにぎりだ。毎朝、セブンイレブンのおにぎりを2個買っている。
 きっとセブンのバイト店員には「帽子のおにぎり野郎」とあだ名されているだろう。講師室にいる他の先生方からも「顔色の悪いおにぎり先生」と思われているに違いない。
 毎朝、決まっておにぎりを食べているが、食べているおにぎりの種類は毎日違う。プロ野球の先発ピッチャーローテーションのようにぼくの買うおにぎりにも密かなローテーションがある。赤飯、舞茸おこわ、鳥五目、ワカメ、梅、シーチキン、大葉味噌、焼おにぎりの8種類を組み合わせて買っている。原則的に前日と同じものを買うことは無い。
 今日のチョイスは、大葉味噌と焼おにぎり。濃い味付けの大葉味噌から食べ始める。食欲が進むような濃厚な味噌の間からかすかに大葉の爽やかさが顔を覗かせる大葉味噌は、夏向きのおにぎりだろう。
 濃い味で満たされた後は、香ばしい焼おにぎりで締める。焦げた醤油の香りが、鼻に抜ける。ところが、おにぎりの先端から3口ぐらい食べたとき想像と異なる味が口の中に広がった。
 異物混入か!?
 そうじゃなかった。ほぐした鮭の身がおにぎりの中から現れた。
 これには驚いた。ぼくは、中身のないプレーンな焼おにぎりを買ったつもりだった。だが、手に取った商品は「鮭入り焼おにぎり」だったのだ。
 なんて紛らわしいんだ。おにぎりは、外見から具材を類推することはできない。黒い海苔に包まれた、ある意味ブラックボックスな食べ物である。だからこそ、ラベルを真剣にチェックして購入している。
 だが、見た目が他と大きく異なる焼おにぎりだと油断してしまう。焦げた醤油の風合いに騙され疑うことなく手に取ってしまった。
 ぼくは、焦げ醤油の味を満喫したくて焼おにぎりを手に取ったのだ。鮭の味など求めてはいない。鮭が食べたいなら、鮭おにぎりを買う。ぼくが焼おにぎり求めるのは、焦げ醤油だけ。それ以外のものは何もいらない。鮭入りなんて邪道だ。許せない。
 おにぎりで、朝から熱くなってしまった。